西海に甦る『サカラメンタ提要』

2011年3月9日

西海に甦る『サカラメンタ提要』

“Manuale ad Sacramenta Ecclesiae Ministranda” ressurrecto em Saikai

 

西海市小学生による『サカラメンタ提要』CD

 

皆川達夫(立教大学名誉教授)

 

  今から4世紀半も昔、わが日本にヨーロッパ音楽、洋楽が渡来して、おどろくべき繁栄をみせました。とくに北九州地域では、キリスト教の聖歌とともに器楽音楽まで受け入れられ、日本人によって歌い奏されたことが多数の史料によって明らかにされています。

  不幸なことに、その後の徳川幕府による大弾圧のため、洋楽譜も、また日本人の手で作製されたという洋楽器も、すべては邪教の具として破棄され焼却されてしまいました。

  16世紀の後半から17世紀初頭、いわゆるキリシタン時代の日本における洋楽受容の姿を楽譜のかたちで証言しているのは、現存する限り、1605年(慶長10年)に長崎で印刷刊行された『サカラメンタ提要』ただ1点のみであります。

  その『サカラメンタ提要』記載のすべてのラテン語聖歌が、このたび西海市教育委員会の企画によって、小学生の演奏を中心に復元されることになりました。

  西海市はその当時ポルトガル船が入港した横瀬浦を擁し、また『サカラメンタ提要』を印刷した機械をヨーロッパから持ち帰った福者中浦ジュリアン出身の地 です。記録によりますと、横瀬浦に上陸したキリスト教宣教師たちは、この地の少年少女たちが歌うラテン語聖歌の調べに驚嘆したということです。今回の企画 も、その当時の少年少女たちが歌った聖歌を受け継ぐことによって、21世紀の小学生たちに郷土に対する誇りと愛情を自覚させようという配慮でありましょ う。

  企画のご相談を受けた当初、わたくしはラテン語の聖歌を小学生が歌えるかと半信半疑でおりましたところ、西海市各校の先生方、全般的な指導にあたられた 宮崎の竹井成美教授、長崎の野下神父や宇都倫子氏、また関係された多くの方々、とくに西海市教育委員会の真摯なご努力によって、この『サカラメンタ提要』 CDが完成されました。

  小学生にはとても無理と思われる数曲だけは、宮崎、大分、東京のアマチュア成人合唱団によって歌われておりますものの、ほとんど重要な聖歌が西海市の小 学生たちによって歌われているのです。聞いたことも見たこともないラテン語の聖歌を小学生たちがともかくも歌ってみせたことに、わたくしは深い驚嘆と感動 とを覚えております。

  今からほぼ4世紀ほど前に西海の少年少女たちが目を輝かせつつ歌ったであろうラテン語聖歌は、間違いなく、この21世紀に蘇生し甦っているのであります。

 

楽曲はこちらで聴くことができます。
解説:

『サカラメンタ提要』について

  『サカラメンタ提要』の音楽について

 

問い合わせ先 教育委員会社会教育課

37-0079